製作日記

何かしらを製作していく記録

D-sub25アナログマルチケーブルの自作

前にケーブルを自作した時、特殊なやつを除いて完成品のケーブルを買うことはないと言ったな。
あれは嘘だ。
特殊なやつやります。
D-sub25コネクタ・アナログ8chマルチケーブルの自作です。
 

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 (mogamiの柔らかいケーブルをこのようにクリップで挟むと、傷だらけになってとても嫌。)

 
D-subマルチケーブルは、もともとPCディスプレイやプリンタの接続に使われていたD-subコネクタを使って複数の音声信号を送るためのケーブルで、パネルの面積の節約のため、マルチチャンネルを扱う機材によく使用されている。
 
だけどその専門性の高さ故か、普通に買うとけっこういい値段だし、ちょうどいい長さのものもあまりない。
大体1本約¥13,000〜ぐらいか。
僕の使っているLynx Aurora 16だとアナログIN/OUTが16チャンネルずつだから、計4本のD-subマルチケーブルが必要になる。
ケーブルに¥52,000はちょっとなー感があったので、自作することにした。
(HOSAの激安ケーブルはさすがに不安だったので却下。)
難しそうで不安だ。
 
 
というわけで材料を買い揃えた。
 
ケーブルはかなり迷ったんだけど、Beldenのマルチケーブルは音質がよくわからない(8412や88760の音が良いのはマグレ当たりだと思う)から却下。
オヤイデのPA-08(線材の生産中止のためデッドストック)は音良いらしいけど、オヤイデのビジネスがあんまり好きではないためこれも却下。
というわけで品質が安定してそうなMOGAMI2932にした。
 
検索中に見つけた、Belden88760を8本使用したやつはいいなーと思ったんだけど、材料のケーブルの全長がえらいことになりそうなので今回は見送り。でもいつかそのうちやってみたい。
参照:
 
 
日本航空電子工業:DB-25PR)
 
コネクタカバーも日本航空電子製の金属製のやつ。
質感と、ノイズが減りそうな気がするのでこれにしたけど高いなあ。
完成品でよく使われてるプラ製のやつが¥300ちょいだからえらい違いだ。
日本航空電子工業:DB-C4-J11-F1)
 
プラ製のはこっち。
Beldenのケーブルにも使われてたので品質的には問題ない。
ただしミリネジなので注意。
(第一電子工業:17JE-25H-1A-CF)
 
気をつけなきゃいけないのが、音楽機材で使われるD-sub25ケーブルの固定用のネジには、インチネジとミリネジの2種類あって、おおよそ海外製の機材(Tascam、AVID、API・・・)はインチネジ、日本製の機材(実質YAMAHAだけ?)はミリネジが使われているらしい。
Lynx Auroraはインチネジだから、ネジピッチが#4-40と表記されているものを選べば大丈夫。
ミリネジなら、M2.6という表記になる。
完成品を買う場合にも注意が必要だ。
 
 
それと工具もいくつか追加した。
 
D-subコネクタを固定するための小型の万力と
 
より小さなカップ端子の半田付けに向いてそうなこて先。
(HAKKO 2C型)
 
それと、もう持っているので今回は買わなかったけど、小型のラジオペンチと、マルチケーブルの切断に使う金属切りバサミもあった方がいいと思う。
 
 
 
よっしゃ、こんなもんかな。
さあやっていきましょう。
(あとあと熱収縮チューブを買っておかなかったことを後悔することになるんだけど)
 
 
まず、ケーブルの下処理から。
ごんぶとのマルチケーブルには当然ワイヤーストリッパーは通用しないので、カッターナイフで切り開くことになる。
先端から大体3センチちょい辺りに、ぐるっと切れ目を一周させて

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その後縦にも切れ目を入れて、切り開く。

MOGAMIのケーブルの皮膜は柔らかいので、皮膜を完全に切断せず、半分ぐらいの深さで切れ目を入れれば手で開くことができるし、中の配線に傷も付かない。

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中の紙をめくり、ノイズ取りの絹糸もまとめて切断。

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中から8チャンネル分のケーブルが出てくる。

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重要なポイントとして、D-subコネクタは横に広いので、ケーブル束を扇状に横に広げて半田付けすると、外側にあるケーブルの長さが足りなくなってしまう。

そのため、横に広げた時のケーブルの先端を一直線上に切りそろえて、D-subコネクタにきれいに半田付けできるようにしてやる必要がある。

切断する長さは、真ん中付近の4、5チャンネルで3mm、そこから3、6チャンネルで2mm、2、7チャンネルで1mmってな感じだったような気がするんだけど、そんな数字いちいち覚えてないし、あんま信用せずに現物あわせでちょっとずつ様子を見ながら切っていってください。

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うん、まあこんなもんだろ。

(ま、ベルデンのマルチケーブルとかだと、かなり長めに切った上で余った分を曲げまくってカバーの中に詰め込んでいたし、ここまで丁寧にやらんでもいいのだろうけど。)

 

次は各チャンネルのケーブルの下処理をしていきます。

MOGAMI2932の場合、ストリッパーのAWG14のとこで切れ目を入れて(切れ目だけ。引っ張っちゃダメ)、ラジオペンチで引っ張るとキレイに剥ける。

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裸のグランド線と、外側のワイヤーメッシュをねじって束ねる。

D-subコネクタのカップ端子は狭いので、写真のように先を尖らせると入りやすくなる。

「細くなれ細くなれ細くなれ〜〜」って念じながらねじるのがコツです。

まあでも無理にワイヤーメッシュも一緒に束ねる必要はないかもしれんのう。

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ホット、コールドの線も剥いて(AWG26)、グランド線とともに予備ハンダ。

ハンダをつけすぎるとカップ端子に入らなくなるので注意。

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熱収縮チューブを買い忘れたので、グランド線には絶縁テープを巻いたのだけどこれは失敗だったなあ。

ハンダごての熱でテープが剥がれるのが大変厄介。

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下処理完了。あー疲れた。

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 んじゃ、ここからいよいよマルチケーブルをD-subコネクタに半田付けしていくわけなんだけど、そもそもD-sub25アナログマルチケーブルの中身ってどうなっているのか。
図面は割と簡単に見つかるんだけど、僕は主にここの「MACKIE - ProTOOLS ANALOG CABLE結線図」を参考にさせてもらった。見やすい。
このページではMACKIEProTOOLSの接続用、となっているけれど、D-subアナログマルチケーブルのピン配置は各社共通だから他の機材でも大丈夫。
 
音声信号のバランス伝送には、ホット、コールド、グランドの三本の線が必要で、それが8チャンネル分だから24本、1本あまりは出るけれど、D-subコネクタの25ピンってのは丁度いい数なんですな。
このピン番号は、D-subコネクタの半田付けする方にも小さく書いてあるので、必ず確認しよう。
 
 
では、動画を見てイメトレをしてから
 
 やっていきます。

1chから8chを順番に半田付けしていく場合、(13番ピンをとばして)25番ピンをスタートに、(1chの)グランド→ホット、左右ひっくり返してコールド→(2ch)グランド→ホット、ひっくり返してコールド→(3ch)グランド→ホット・・・という感じになります。

リズムに乗れれば割と楽にできるけど、万一つけ間違えると、小さいカップ端子から半田を外すのは至難の技なので、くれぐれも慎重に。

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XLRケーブルを作ってた時は「あー半田付け楽しいなーもっと半田付けがしたいよー」って感じだったけど、これはきつい。

人から頼まれたとしても、作業料¥5,000だと迷うなー。

¥10,000でなんとかかなー・・・完成品が高いわけだ。

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できた。 

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根元を絶縁テープでまとめてますが、これも熱収縮チューブを使ったほうがキレイに仕上がります。

ヒートガンが高くて買おうかどうか迷っちゃうんだよなあ。

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コネクタカバーを組み上げます。

慣れてくるとここまでで2時間ぐらい。

片方を組み上げた時点でMPが切れるので、1本作るのに2日かかる。

ケーブルは4本必要なのでここまでの作業を8回繰り返さねばならない。

うぐぐ。

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そして・・・

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 おわったー!!!!!!
 
さっそくAurora16と、コンボジャック to D-sub25のパッチベイ、NETWORK SOUND MAMBAをつなげましょうそうしましょう早くしようさあさあさあほらほらほら!!!

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動いたー!!!!!!!!!!!!

うっひょーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

今回作ったのは2m×4本で、材料費が大体3万円。

コネクタカバーが良いやつだったり、ケーブルの長さの違いを考慮すると、完成品の大体半分以下の値段で入手できたことになる。

作れるんなら自作したほうが得っちゃ得なんだけど、わりとしんどいからあっさり完成品を買うのも全然ありだなーと作ってから思った。

まあでもけっこう面白かったし良しとしよう。

 

 

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出番待ちのケーブルを束ねると、ネイティブアメリカンのお守り、ドリームキャッチャーに見えなくもない。